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ジャイプールはデリーの南西約260kmに位置するラジャスターン州の州都。
ムガル帝国時代の1727年、この地一帯を治めるアンペール王国のマハラジャ(大王)、サワーイー・ジャイ・スィン2世が、アンペールから遷都するため、近くのこの地に建設したのがジャイプール。約10kmの赤い城壁で囲まれ、「ジャイ」は当主の名から、「プル」は「城壁に囲まれた町」を意味しています。日本では「ジャイプール」という表記が一般的ですが、本来は「ジャイプル」の方が正しいようです。現在は、城壁の外側に、新市街が広がっています。
またジャイプールの南方には、虎をはじめとする野生動物が生息しているランタンポール国立公園があります。
旧市街の中心にある、中庭・庭園・建物からなる宮殿群。
アンベール王国のジャイプール遷都にあたって、1726年に当主サワーイ・ジャイ・スィン2世が建設しました。
現在も敷地内には、マハラジャの子孫が住んでおり、居住区域以外を宮殿博物館として一般公開しています。
(写真は、マハラジャが住む「月の宮殿」)
貴賓謁見の間である「ディワニー・カース」はいかにも宮殿。展示されている銀の壺はギネスブックにも載る世界最大の銀製品。1902年にマハラジャがイギリス訪問の際、毎日の沐浴のためにガンジス河の水を入れていったのだとか。
その他、歴代マハラジャの衣類や、集めたペルシャやヨーロッパからの家具装飾品、職人の技術を集めた壁面装飾にも注目です。
ジャイプールを建設したマハラジャ、サワーイー・ジャイ・シン2世は、天文学にも秀でていて、インドの5か所に天文台を作っています。最初に創ったのはデリー(1724年)でしたが、ジャイプールに遷都後の1728年、宮殿のあるシティ・パレスのすぐ近くにも天文台を設立しました。やはり、お膝元のジャイプルだけあって最も規模が大きく、世界遺産に登録されています。
「ジャンタル・マンタル」とは、「計測する器具」の意味。巨大な大きさは、より正確に観測するためのもので、日時計は、なんと2秒単位で計測できるんだとか。
太陽や月、星の位置や動きを観測し、暦の作成から、日食や月食、雨期の到来、洪水、日照り、収穫の予想をし、政治や祭事に活躍していたようです。
(写真の円形状の観測機は「ナリ・ヴァラヤ・ヤントラ」。これで太陽の位置を計測できる)
やがて望遠鏡などの技術発達によって、天体観測の上では過去のものになっていきましたが、当時にあっては、東西の知識を集めた一大天体観測所だったといえるでしょう。1901年に修復が行なわれ、今でも、観測が続けられています。
ジャイプールから北東へ11km。岩だらけの丘に立つアンペール王国(ラージプート族・カチュワーラー家)の城塞兼宮殿。ムガル帝国のアクバル軍の司令官となったカチュワーラー家のラジャ(豪族)マン・シンが、 1592年にアンべールに築城。アンペール王国のマハラジャ(大王)として、以後、約130年間、代々この地を治めます。1727年に、陶磁のマハラジャ、サワーイー・ジャイ・シン2世がジャイプールに遷都するまでは、アンベール王国の首都となった場所です。
マハラジャとは、「マハ」(偉大な)+「ラジャ」(王)で「大王」の意。帝国に従属していても、各地方を治めている、日本でいえば「藩主」に近い存在です。他の地方豪族的なラジャに比べ、より勢力を強め地域を治めたラジャに対して「マハラジャ」の称号が与えられます。
丘の下には象タクシーがあり、うまく空象(?)があれば象に乗って入城することもできます。
城壁の外観はやや無骨な感じの要塞風な姿ですが、中の宮殿に入るとマハラジャにふさわしく華麗な装飾で、栄華を物語っています。
丘の傾斜を利用して、下層部は兵士たちの訓練や、役人との会議など公的な場として用いられ、上層部はマハラジャの私的空間となっています。特にマハラジャが来賓を迎えた「勝利の間(ジャイ・マン・ディル)」は、無数の鏡を散りばめた幾何学模様の装飾が見事で「鏡の間(シーシュ・マハル)」とも呼ばれています。
ムガル帝国のインド・イスラム文化と、この地域伝統のラジャスタン様式が、見事に融合しています。
写真は順番に、マハラジャの私的宮殿の入り口となるガーネシャ門、鏡が散りばめられた「勝利の間(鏡の間)」、 王の私室となる「歓喜の間(スク・ニワース)」。
歓喜の間の前にはイスラム美術の文様で創られた中庭があり、奥には妃、側室、侍女たちが暮らす男子禁制のゼナーナがある。
インド最大の面積を誇るラジャスターン州。「ラージプート(インドの正統的な戦士集団)の土地」という意味であり、マハラジャたちが勢力を誇示してきた地域です。豪華宮殿ホテルにも滞在できます。
ジャイプールの南方には虎をはじめとする野生動物が生息するランタンポール国立公園、州西部には砂漠が拡がっています。