韓国企業を視察する理由―韓国中小企業にみるビジネス力

韓国中小企業にみるビジネス力

 

 今やK-POPや韓流ドラマは、日本のみならず、世界で人気を博し、またファッションやコスメにおいても若い世代を中心に世界に広がっています。
 それ以外の多くのビジネスシーンにおいても、韓国の海外市場への進出には、目を見張るものがあります。その原動力の1つとなったのは、ITデジタル技術の高さです。
 日本と韓国…。地理的にも近く、類似点もありますが、様々な点で違いも多い両国です。特に業績を伸ばしている中小企業の行動力には、一目置くべきものがあるでしょう。
 韓国企業との違いを知りつつ、自社のビジネスのヒントを探ってみませんか。

にこまるツアー代表 笹岡真奈美
 
★韓国中小企業視察のポイント!
 1.常に海外市場を意識した姿勢と取り組み
 2.「パリパリ文化」で培われた即断・即決・実行力
 3.官民一体となったデジタル変革

韓国の人口は日本の約半分、しかし成長率は高い!

 日本の人口は約1億2000万人であるのに対し、韓国はその約半分の5100万人です。
 少子化や高齢化と言った社会問題は、日本も同様ですが、元々人口の少ない韓国では、より切実…。ビジネスのターゲットは、自ずと海外へと向けられていきました。

 地理的ばかりではなく、社会構造や経営環境においても共通する部分が多いといえる両国ですが、日本が低成長で苦しむ中、韓国は年々成長し続けています。
 その違いは、やはり海外へ進出、展開していくスピードと実行力と言えるでしょう。日本企業が検討している間に、韓国では大手のみならず、中小企業であっても海外へと進出していきます。

 GDP(国内総生産)の額でこそ、日本は世界第3~4位の座にありますが、成長率においては長きにわたり、およそ1%前後と停滞しています。
 その一方、韓国では毎年2~4%程度の成長率で着々と成長してきました。コロナ禍から2023年には、一時的に成長率も下がりましたが、2024年には再び2%台へと回復する兆しを見せています。このまま行けば2025~2035年には、一人当たりのGDPの額でも日本と逆転するという予測が報じられている通りです。[1]

日韓一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1980~2024年)

データ:IMF(2024年4月推計を含む)・図表:世界経済のネタ帳

 物価も上昇しており、平均賃金もドル換算して比較すると、日本と同等レベル、最低賃金や大企業の大卒初任給は日本を上回っています。[2]

 残念ながら「安い韓国」というイメージは、もはや過去の話となってきています。

起業も、新規事業も、海外進出も全て「パリパリ!」

 韓国では「パリパリ文化」(빨리빨리 パリ パリ「はやく、はやく」の意)と言って、何事でも早くやる(できる)ことを好みます。
 それはビジネスにおいても同様で、新しい事業や技術の導入にも抵抗が少なく、検討するよりも「まずは、やってみる」「やりながら修正する」というのが日常的です。
 元々、独立起業を目指す人は多いのですが、国レベルでもスタートアップ企業の育成に力を入れており、起業でも新規事業の立ち上げでも、日本と比べて圧倒的に速いと言えます。

 中小やスタートアップ企業ならではの俊敏さや柔軟さ、またトップが直接指揮を執る迅速な意思決定も、韓国企業の強みとなっています。
 韓国企業では、国内市場の規模に制約されないように、規模の大小にかかわらず、積極的に海外展開を行っており、韓国で一定の実績を上げた後に日本市場に参入するケースも多く見られます。これも、もちろん「パリパリ」です。

官民一体、国を挙げての「デジタル産業革命」


ⓒPhoto Korea – IR Studio

 近年、韓国がIT先進国と呼ばれるようになる最初の原動力となったのは、1999年、金大中政権時に打ち出された電子情報化政策「サイバーコリア21」でしょう。今から20年以上も前の話です。[3]

 1997年にIMF通貨危機に陥った韓国でしたが、この一大事の中で就任した金大中大統領は、IT事業を経済の立て直しの要とし、国の一大プロジェクトとして推し進めていきます。
 高速デジタル通信回線等のインフラ環境整備はもちろん、利用者への支援やレクチャーも行ない、活用面でも、社会保険や地方自治体の行政サービスの電子化を積極的に導入。国が地方自治体用の基幹ソフトを開発したことで、全国画一的に電子データが利用可能になりました。[4]

 さらには、インターネットを活用した新しいビジネスの創出や、ベンチャー企業への支援、専門技術者の育成を実施していきます。


ⓒPhoto Korea – IR Studio

 特筆すべきは、当初よりネット上で流通させるデジタル・コンテンツ産業の支援・育成にまで目が向けられていた点でしょう。
 映画、ドラマ、音楽、ゲーム等のコンテンツ制作が、国家戦略として取り組まれ、その結果として、今日の「韓流ブーム」や「K-POPブーム」があると言えます。[3]

 国家主導のトップダウン方式に加え、「パリパリ文化」の国民性も、ITデジタル分野と見事にマッチし、世界でもいち早く関連サービスや産業が発展、一時は大ピンチにあった韓国ビジネスも、デジタルのスピードに乗って世界へと発展していったのです。[5]

 もちろん現在でも、国によるデジタル化政策は続けられています。[6]

 2022年、尹錫悦大統領も「大韓民国デジタル戦略」を発表。[7]
「政府24」というポータルサイトでは、今すでに住民票や土地の登記謄本、納税証明書、さらには小中学校の卒業証明書の発行にまで及び、保険、年金、育児手当、各種補助金などの手続申請等も可能になっていますが、さらなる利便性や福祉の向上が図られています。
 行政面だけではなく、デジタルを使った製造業や農林水産業、地域経済の活性化、AIや最新技術の活用やそのための人材育成、各種法整備等が行なわれています。[6]

 スイスのIMD(国際経営開発研究所)による2023年「世界デジタル競争力ランキング」では、対象の64か国中、韓国は総合6位、日本は総合32位と大きな差がついています。
 日本はインフラや技術的な蓄積はあっても、「規制の枠組み」(日本50位)、「人材」(49位)、「ビジネスの俊敏性」(56位)において伸び悩んでいるようです。[8]
 こうした点において、韓国を視察する意義はありそうです。

日本と近い韓国だからこそ、成長のヒントを学ぶ価値あり!

 もちろん日本には日本の良さがあります。技術力や品質の高さ、誠実さは、世界に誇れるものです。にもかかわらず、海外市場に遅れを期してしまうのは、もったいない話です。
 韓国企業は、海外進出や新規事業の展開において、高い能力と柔軟性を持っていると言えます。彼らの戦略や、その実践を視察することで、日本においてもビジネス展開や発展に役立てるヒントや刺激を多く得られるはずです。

 にこまるツアーでは、御社の事業内容やニーズに合わせて、関連する韓国中小企業を中心に、視察先をコーディネートいたします。まずは、ご相談ください。

企業様向け専門デスク「にこビズ」


「旅行」のかたちにとらわれず、新しい社員旅行のスタイルを提案します!
にこビズ https://nikobiz.jp/

参考文献

  1. 百本 和弘(2022)「韓国の賃金水準、日本並みに」JETRO日本貿易振興機構, https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/f149c659091ddd01.html
  2. 富山 篤,田中 顕(2023)「1人当たりGDP、日韓逆転は2031年」日本経済研究センター https://www.jcer.or.jp/economic-forecast/20231218-2.html
  3. 齋藤 豪助(2005) 『「韓流」にみる韓国のコンテンツ振興政策』 KDDI総合研究所, https://rp.kddi-research.jp/article/RA2005011
  4. 田辺 豊(2003) 『韓国電子自治体とIT施策2003』 財団法人自治体国際化協会 (ソウル事務所) ,https://www.clair.or.kr/information/clair_report.asp
  5. 成 承炫(2021)『海外動向 第1回:韓国に吹いたDXの追い風、日本にも吹くか』 三菱総合研究所, https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20210402.html
  6. 当間 正明(2023)『電子政府サービスの利用・認識度が進展(韓国)』 JETRO 日本貿易振興機構, https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/df10008c774523e9.html
  7. 研究開発戦略センター, “韓国・科学技術情報通信部(2022)『「大韓民国デジタル戦略」発表』(同センター訳)の概要” ,研究開発戦略センター https://crds.jst.go.jp/dw/20221125/2022112533808/
  8. IMD 国際経営開発研究所(2023)『2023年世界デジタル競争力ランキング』 https://www.imd.org/news/world_digital_competitiveness_ranking_202311/