現在、台湾・新北市淡水にある日本統治時代の家屋が修復工事を終え、2016年7月18日から一般公開が始まりました。
この日本家屋は、元淡水街長(現在の区長に該当)だった多田栄吉氏の旧邸宅。「淡水街長多田栄吉故居」として市の指定文化財にも指定されています。
多田栄吉氏は、神戸出身。1897年に台湾に渡り、台北で電気機材を扱う「千代田商会」を設立。その後、淡水に居を構えたようです。
淡水街協議会員、淡水商工会会長、淡水漁業組合長などを歴任し、1930年には日本人では初の淡水街第4期街長に就任。交通と教育の面で尽力しますが、任期満了の半年前の1933年、高齢のためか、自ら辞任したそうです。淡水では、当時の来台した日本人実業家の中でも「公益事業を喜びとする数少ない人物」と評しています。
今回公開された邸宅は、街長辞任後の1934(昭和9)年に完成した住居。建材にはタイワンベニヒノキが使用され、趣のある日本家屋となっています。また当時、台湾全土をみても珍しい水道が引かれているのも特徴的で、実は淡水の水道事業発展にも一役、担っていたようです。
1945年の終戦時に、多田氏も神戸に帰還することになり、この邸宅は地元台湾人に売却されました。2005年に市指定文化財に指定。一時はトタンで代用されていた屋根も、当時の瓦屋根に修復され、今回の公開へとなりました。
見学時間は平日9:30~17:00、土日9:30~18:00。室内見学は、10名を上限に、希望日の2週間前までに予約が必要とのことです。